木村敏晴さんという方がいる。肩書きは「農家」兼「農業関連事業参入アドバイザー」。東大法学部卒業後、新卒で外資系コンサルティングファームに就職。その後ワタミファーム社長を歴任し、食とビジネスのプロフェッショナルとして新規就農に挑んだ、異色の経歴の持ち主だ。

現在はインドネシアでコメの通年生産に取り組むほか、企業向けに農業関連事業の参入アドバイザリー業を行なっている。

木村さんの特徴は①事業会社経営②農業生産、二つの立場を経験している点にある。農家に対しては経営的視点を、企業に対しては生産現場の視点を与え、両者に寄り添ってきた。

ついつい目先の課題を優先するあまり経営的な視点をおろそかにしがちな農家、生産現場の事情がわからないが故に事業がうまくいかない企業、双方の課題を解決する上で、両者の距離を縮めていくことは木村さんの大きな役目だ。

そして、オンラインサロンは自身がその役目を果たすための一つの解だ。

木村さんが運営するオンラインサロン「農家&農業関連事業のモヤモヤしている人集まれ!」の中では、企業と生産者が互いの情報や知見を共有し合う他、木村さん自身が互いの事情も踏まえた”翻訳者”となり、より良い農業の在り方を探っている。

今回は、その中身を紹介しながら皆さんと新時代の農業について考えていきたい。

なぜ農業は儲からないのか

木村さんは農業の抱える構造的な問題について、オンラインサロンの中で以下のように述べている。

農業という産業は、日本でも海外でも、労働者の1時間あたりの付加価値は低いですし、補助金を抜いたベースでは大赤字です。なぜか? 私は、農業従事者が、頑張っていない/能力が低いという事は無いと感じています。

事実として、構造的問題の影響が大きいと思っています。ざっくり言うと、その構造とは、

 

1)作るのに先にコストがかかる。なので、人件費とか農業資材費とか原価っぽいコストも、実は「固定的先行投資」的な色彩が強い。

 

2)出来た物は、「すぐ売らないと価値が落ちる」保存が効かないもので、販売の交渉力を獲得しにくい

 

3)自営的経営にならざるを得ない部分が大きくスケールしきれない、また、「明らかに差別化されたもの」も出来にくく、規模的或は差別化力的交渉力を獲得しにくい。

 

更に言えば、農業自体楽しい/やりがいがあるので、この構造にも関わらず、農業従事者は存在し続ける。且つ1農家・農業生産法人あたりの生産量は、様々な技術革新の結果、上がっている。なので供給不足は起きない、という状況です。

これが、とにもかくにも、大前提の難しさだと思います。この状況は根本的に変わる事はないでしょう。この事を正面から見据える必要があると思います。

作物の種類によるが、比較的サイクルの早い葉物野菜で1~数ヶ月、米なら1年、果樹ともなればまともに生産できるようになるまで数年はかかる。生産量が天候に左右されることも多く、正確な売上予測を立てづらいことも販路の開拓を一層困難なものにしている。また、「ブランディング」に取り組んだとしても、結局のところ安全性や美味しさといった極めて曖昧な指標を売りにすることしかできずに差別化に苦しむことになる。結果として多くの農家が独自に販路を持つことの重要性を感じつつも、流通を農協に頼らざるを得ないとい事情がある。

…と、ここまでは基本的な課題認識である。木村さんはさらに、ビジネスフレームワークを巧みに使いながらこの課題を掘り下げていく。

経営視点で農業を考察する

ポーターの「5フォース分析」(編集部注:業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法)という、経営の世界ではよく使われるフレームがあります。これを用いて考えると、 

 

対売り先: 大きな卸市場では、買い側(イオンであったりIYであったり)の価格交渉力の方が強い。そもそも農協に販売の場合、価格は商品受け渡し時には知らされず、市場で売れてから決定。価格決定権すら無い。

 

対供給元: 農業資材を提供するプレイヤーは限られており、こちらも交渉しにくい。結果農業機械なども非常に高い

 

対競合: 自営的で、「同様の農産物を作っている農家/地域」は沢山ある。また、日本という事で見れば、海外産品の輸入との競争にもさらされる(代替品/新規参入のプレッシャーはそれほどでもない)

 

これに対して、どう対抗して行けばいいか?

これについても、色々ありますが、まずは、またまたポーター先生に登壇して頂いて、「競争の戦略」を元に考えたいと思います。

 

ポーター先生は、競争力を確保するには、大きく三つの方向性があると言いました。

 

1)価格競争力(効率性)

 

2)差別化能力(プロダクトアウトでの革新性)

 

3)顧客密着力(顧客との絆の強さ)

 

古典だけあって、なんとも含蓄深いと思いますし、農業にもしっかり当てはまると思います。このどの戦略をとるかを、非常に明確に設計して、ブレずに経営して行くことがとても大切だと思います。

「なぜ農家が儲からないのか」という原因を考察した上で、今農家が取り組むべき課題について的確に整理してくれている。この後、それぞれの3つの方向性について、具体的にどのような手法があるのか、木村さんの実体験をもとにサロンメンバーと議論を重ね、実践的なケーススタディが展開されていった。

ケーススタディの例)

 

— 新規就農 個人宅配&体験@軽井沢【失敗】

 

— 上海—大規模近郊農業【失敗】

 

— インドネシア—通年できるぜ、働く人も沢山居る!【継続中】

 

— りんご輸出 長野からフィリピンへ【停止中】

 

— 緑茶粉末輸出 九州からインドネシアへ【軌道に乗った?】

 

— 大手農業生産法人の場合 六次産業化って、、、【苦戦中?】

木村さんの発信だけでなく、サロンメンバーが議論に参加することで、知見が積み上がっていくのがサロンの魅力だ。木村さん自身も「農家と農業関連事業を進める方とが交流し、本音・リアルをぶっちゃけあう場を作る事で、双方に意味のある発見と創発を生み出して行きたい」と語っている。

また、下記のようなテーマでSkype座談会なども行なっていく予定だ。記念すべき初回は12月に予定されている。

ディスカッションコンテンツの例)

 

— なぜ企業の農業参入は失敗するのか?ありがちな構図

 

— 農家の気持ちをわかろう!農家あるある/農家の常識はサラリーマンの非常識!?

 

— 新規事業担当者/農業関連事業担当者の気持ちをわかろう!〜企業戦士も辛いんだよ〜

 

— ガラパゴス!?日本の農業と世界の農業 — これからのトレンドを掴もう!〜消費/流通編

 

— これからのトレンドを掴もう!〜生産現場/技術編 — 元コンサル農家が語る、農業経営抑えておくべき視点〜point of view

 

— 元コンサル農家が語る、新規事業創出抑えておくべきポイント

 

— 「人」をどうするか。採用、評価、外国人活用エトセトラ

 

— 農業のリアル収支モデル 基本的な農業の「リアル」を収支で理解

 

— 六次産業化/農工商連携等について語ろう!

 

— 農地の広げ方/獲得の仕方について語ろう!農地バンクなど

 

— 農業ファイナンス:資金繰りの基本的考え方、A-5、補助金etc — 農家プロファイリング〜いくつかに分かれる農家のタイプと傾向

他にも、生産者ならではの栽培専門知識、時事問題、現場を回すための経営ノウハウ、トラクターの自動運転技術に関する最新事情など、配信・議論される情報は多岐にわたる。

詳しい内容が気になる方はぜひオンラインサロンをのぞいてみてほしい。価格はたったの500円/月だ。農家、農業関連事業を進める方が集えば集うほど、このコミュニティの価値は高まっていくはずだ。

農家&農業関連事業のモヤモヤしている人集まれ!利用料はオフ会代で還元!
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このサロンは、農家と農業関連事業を進める方とが交流し、本音・リアルをぶっちゃけあう場を作る事で、双方に意味のある発見と創発を生み出し...