2016年11月26日、「西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」のオフライン読書会が開催された。

公共政策、情報社会論を専門とする社会学者・西田亮介さんのサロンオフ会は、毎回一冊の図書を取り上げ、参加者と共に内容の解釈を進めていく読書会形式で行われる。

レジュメが配布され、テーブルを囲んで議論する様子は大学におけるゼミの授業風景そのものだが、参加者には社会人も多く、働きながら学びたいという人のために大学のゼミとは違った工夫が施されている。

まず、サロン名にもある通り、題材とされる本は「新書、文庫、雑誌」の中から選ばれており、仕事が忙しい人でも普段の生活の中で読むことができるよう配慮されている。また、読書会参加にあたって本の読了は必須ではなく、読書会への途中入退室も可能となっている。

こうしたルールについて、大学でも教鞭をとる西田さんは「大学のゼミではもっと厳しくやっていますが、こちらはあくまで“大人のアクティビティ”ですので」と説明する。

間口を広くとりながらも、上手い形で大学のゼミを再現し、会社や大学、専門分野などの垣根を越えて集まった人々と、自由に議論してみようというのが、この読書会のコンセプトだ。

この日は『社会学講義(橋爪大三郎/大澤真幸 他著)』がピックアップされ、都市社会学、文化社会学に関する一時間半の授業が行われた。 

参加者たちとつくりあげる読書会

「第5回オフラインゼミの日程が確定しました。2016年11月26日(土)10時半〜12時@Synapseさんオフィスです。『社会学講義』の続きになります。繰り返しですが、大学のゼミではありませんので、本を読めなくても、極端な話、本を持ってこなくても問題ありません。お気軽にご参加いただければと思います。また参加者のなかでレジメを作ってもいいよという人も絶賛お待ちしております。」

読書会の一ヶ月ほど前、西田さんからオンラインサロンにこんな文章が投稿される。投稿に対して、現在60名近いメンバーたちから続々とコメントが集まる。

「参加します〜。第3章のレジュメは前回の残りを使います。第4章、◯◯さんやりますか?」
「参加します! 4章のレジュメも担当させてください!」

「第1回ぶりになりますが、参加させていただきます。」

「今回は仕事の都合で参加できません…残念です><」

授業のレジュメを作成するのは参加者たち。一ヶ月前にも関わらず、読書会を楽しみに待つ人たちの投稿でタイムラインは盛り上がる。

読書会当日、今回は『社会学講義』の第3章「都市社会学」、第4章「文化社会学」がテーマだ。発表希望者が作成したレジュメが配られ、10分程度のプレゼンテーションが行われる。

発表が終わるやいなや、西田さんが口火を切る。

「いま『交通』という言葉が出てきましたが、交通というのはマルクス主義用語で、コミュニケーションのことなんです。この手の本を読んでいて交通という言葉の含意が大きいなと思ったときは、交通という言葉をコミュニケーションに変換して読み進めてみてください。」

「筆者が都市工学を矮小化して批判しているのではという指摘がありましたが、都市工学を仮想敵にしているのではなく、技術決定論を仮想敵にしていると考えてください。技術決定論については、変化仮説と正常化仮説というものがありまして…」

西田さんの淀みない口調につられるようにして、参加者たちも喋りはじめる。

「例えば都立大学や首都大学東京というのは、『都市』と密接に関わる大学であることを志向しているものであり、教育・研究面でもそういったコースやカリキュラムを用意していくことになると思うんですが。そもそもアカデミズムは、都市に対して何を生産できるものであるという期待があるのでしょうか?」

書籍の内容を踏まえ、西田さんにぶつけられた質問。実際に東京工業大学で大学教員として働く西田さんは、大学のカリキュラムのつくられ方や、国公立大学と自治体・議会との関係を丁寧に説明していく。質問者の持つ「社会とのかかわり合いの中で、アカデミズムには何ができるのだろうか」という感性が、実にこのサロンらしい。

オンライン・オフラインを駆使してリベラルアーツを学ぶ

こうしたオフ会の様子は映像収録され、後日、サロン内にアップロードされる。開催地の東京から離れた地域に住むメンバーは動画を通じてその様子を聴講したり、当日参加したメンバーが復習教材として活用したりすることもできる。

もちろん、使用されたレジュメについてもpdfデータがサロン内で共有されるなど、西田サロンはオンライン・オフラインをフル活用することで人々の学びをサポートしている。

また、「リベラルアーツを学ぶ」ことを趣旨とする本サロンでは、読書会で扱う書籍やサロン内で推薦される雑誌、記事などの領域が実に幅広いというのも大きな特徴だ。

一般にリベラルアーツとは、「基礎・教養的な科目」と説明されるが、西田さんの言葉を借りるならばリベラルアーツとは次のようなものだ。

リベラルアーツとは、もともと自由技芸7科に由来します。当時、哲学に加えて、文法、表現、論理学、代数学、幾何学、天文、音楽の7つの科目を習得することで、「(奴隷ではない)自由な人」になることを目指したのです。

「奴隷ではない」とは、決して実際の身分を指しているわけではない。価値観や生き方といった、人の精神性について向けられた言葉だ。例え奴隷階級の身分の者でも、学びを得ることで精神的に開放され、自由になることができる。リベラルアーツという言葉には、そんな思いが込められている。

現代の日本社会には奴隷という身分は存在しないが、何か漠然とした不自由さを感じながら過ごしている人、生きづらさを抱えて日々を過ごしている人は少なくない。

西田サロンで学ぶということは、新書、文庫、雑誌という敷居の低い教材を使って様々な参加者と会話をすることで、物事を見る目を養い、自由な人になることを目指すということだ。

いま、ニュースを通じて伺える社会の姿は、あなたにはどのように映っているだろうか。世の中の出来事と自分がどこか無関係であるような気がしているならば、ぜひ西田サロンで現代のリベラルアーツを学んでほしい。

リベラルアーツを習得したい人、広く社会的な話題について議論しあえる仲間がほしいという人、また読書や学習のペースメーカーがほしいといった方々にとって、「西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」は最適な学びの場となることだろう。

西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
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