都知事選が近づくなか、各候補様々な選挙戦を展開しています。今回は、『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『こだわりバカ』『キャッチコピー力の基本』の著者である、コピーライターの川上徹也さんに各候補者のキャッチコピーを採点していただきました!(Synapse編集部)


この原稿は、都知事選投票日の1週間前に書いている。まだ結果はわからない。今後、何か話題になる言葉が出てくる可能性もあるが、現時点での主要3候補のキャッチコピーや演説などでの言葉の使い方について独断で採点してみたいと思う(あくまで言葉の使い方のうまさが評価点で、政策・思想・人柄等は考慮に入れていない)

各候補のキャッチコピーを採点する

3候補の採点をする前に、他の候補のキャッチコピーも見ておこう。今回、都知事選には21名の立候補者がいる。

以下、選挙公報やウェブサイトから各候補のキャッチコピーをランダムに抜き出してみた(※キャッチコピー的なものが見つからない候補や東京や都政と関係ない極端な主張のものは省いてあります)

・国際人を育む、夢のあるカラフルなTOKYOを目指す

・庶民感覚で、《未来創造都政》の実践を目指します!

・あたたかさと夢あふれる東京に

・東京を必ず変える

・都政を国民の手に取り戻す

・あなたに都政を取り戻す

・あなたと一緒に、TOKYOパワー全開

・プラチナ首都を創造しよう

・都民が決める。都民と進める

・職業政治家NO!!都政をボランティアで!!

・2020年世界はTOKYOに!

・都政に、こころを。

・共に成長、東京から

・自己責任に基づいた真の自由と心あたたかい東京

いかがだろう? 私はあってもなくてもいいような空気のようなフレーズのことを「空気コピー」と呼んでいるが、都知事選候補者のキャッチコピーはまさにこの「空気コピー」のオンパレードだ。

実はこの中に主要3候補と言われる鳥越俊一郎、増田寛也、小池百合子各氏のキャッチコピーも含まれているのであるが、わかるだろうか?

正解は以下の通り。

鳥越俊一郎「あなたに都政を取り戻す」

増田寛也「あたたかさと夢あふれる東京に」

小池百合子「都民が決める。都民と進める」 

いずれも抽象的だが、中でも増田氏のキャッチコピーは、「ザ・空気コピー」といえるようなフレーズだ。それに比べると鳥越氏は「あなた」を、小池氏は「都民」を、それぞれ主語にしている点が少しは評価できる。

採点は鳥越50点 増田30点 小池40点とした。

続いて少しは具体的になるはずの政策の部分のキャッチコピーを見てみよう。

鳥越俊太郎

3つのよし「住んでよし」「働いてよし」「環境によし」を実現する東京を!

増田寛也

3つの実現「あたたかさあふれ、お年寄りも子供も安心できる東京の実現」「大災害の不安を解消し、安全に守られる東京の実現」「2020年大会を起爆剤に、世界一の魅力あふれる東京の実現」

小池百合子

3つの「新しい東京」をつくります。「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」 

3候補とも「3つの××」という手法を使っていることがわかる。一般的に論点を3つに絞るとわかりやすくなる。コピーライティングの基本手法だ。ただやはり各候補とも内容が抽象的だし、内容の区別がほとんどつかない。ただここでも増田氏の空気コピー度が高い。鳥越氏の「3つのよし」はあまりに大雑把すぎる。小池氏の「ダイバー・シティ」は、本来の英語の意味とは違うのではという意見もあるが、まだ刺さるフレーズにしよういう努力がみられる。

採点は、鳥越40点 増田30点 小池50点とした。

演説でのキャッチコピー力を分析する

では、各候補の記者会見・演説での「言葉の使い方」はどうだろう? 

小池氏は、記者会見や演説での「キャッチコピー力」がずば抜けている。いろいろと印象に残るフレーズはあるが、中でもテーマカラーを「百合子グリーン」と名づけたネーミングセンスと、「(演説に)緑を持って集まって」という呼びかけは秀逸だ。

増田氏は朴訥としているが、演説は意外にわかりやすくてしっかりしている。内容的に目新しいものはないが、その分、安定感と信頼感がある。

鳥越氏は記者会見から準備不足の不安を覚えた(正直で好印象という人もいたが・・・)。演説でも抽象的な言葉が多く、多くの人に刺っていない印象だ。

採点は 鳥越30点 増田60点 小池80点 とした。

投票1週間前時点でのキャッチコピー力の採点では、小池氏が一歩リード。増田氏が追い上げるという図式か。鳥越氏はやや弱含みな印象だ。

もちろん選挙は「キャッチコピー」や「言葉」だけで決まるものではない。またそれで決まっていいとも思わない。ただ、政策の差がほとんどわからない以上、選挙民はどうしても政治家の「言葉」で判断さぜる得ないのだ。

これから1週間、各候補がどんな「言葉」を訴えるかで当落は決するだろう。

 

行列がうまれる「1行バカ売れ」コピー塾
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