編集者とはいつもいつも企画を考えている人種です。

人の話は企画のための「ネタ」でしかないので、反応も上の空だったりします。目の前の編集者の視線が浮ついていたら、きっと心はあらぬ所に飛躍しているはずです。僕はインタビューの仕事もするので、よく人の話を引き出すのがうまいと言われます。

ところがインタビュー中もそれほど話に集中しているわけではありません。話を片耳で聞きながらも、頭の中は次の展開を考えています。聞くことに集中していたら、話を引き出すことは難しいのです。

集中しないこと。

企画作りに大切なのは集中しない思考法なのだと思います。

今回は「拡散思考法」で企画を生み出す方法を説明しましょう。

 

拡散思考法を使った企画作り

あなたが雑誌の編集会議に参加しているところを想像してください。まずロジカルに導き出されるテーマがあるとします。

例えば美容誌であれば今の季節の定番は「春のメーク特集」だったりします。たいていの編集者はこの春のトレンドであったり、読者が今の季節に求めるものを調査していますから、そこから導き出される企画があります。

ある編集A(20代男)がこんなことを言いました。

「春は花粉症の季節です。今や国民の4人に1人はスギ花粉症だという調査もあります。ある花粉症の読者はこの季節だけはメークができないと言ってました。だからマスクで顔を隠して、家に帰るまでマスクを取らないそうです」

この話を聞いていた副編集長(30代男)が言いました。

「メークできなきゃ春のメーク特集できないよね」

「でも目だけは出している訳だから、アイメークは必要じゃないですか?」と編集A。

花粉症の編集B(20代女)が答えます。

「めっちゃ目が痒くてアイライン入れられないです。この季節はスッピンです」

「花粉症を言い訳にノーメークで済ませちゃうって、実はメークするの面倒くさいんだと思います、今時の若い子は」とデスクC(30代女)が言います。

「美容雑誌なのに困ったね〜」と副編集長が言うと一同沈黙。。。

その会話を聞いていた編集長(40代おっさん)が突然こんなことを言いました。

「花粉症の女の子って色っぽくない?」
「????」(一同)
「恋する女の子と花粉症って近いように思うんだよね〜」
「????」(一同)
「ちょっと涙目で失恋したみたいだし、マスクで頰が赤く上気して見えてボーッとしてて、スッピンなのにちょっと色っぽいよ。ほら熱のある時もそうじゃない」

「確かにチーク入れてるみたいに見えます」と編集A。
「スッピンにチークって意外にモテるんじゃないか?」と編集長。
「チークなら鼻をかんでも落ちないし、目も痒くなりませんね」と編集B。
「アイメークだってマツエクしちゃえばいいですね」とデスクC。
「よし、面白い企画になりそうだな。タイトルはこうだ」と編集長。

サブタイトル:
花粉の季節到来! でも花粉症の女の子って意外とモテるという噂アリ!
メインタイトル:
スッピンが映える! 微熱チークで花粉美女!
コラム:
スッピンアイメークこそマツエク

この編集会議でのポイントは編集長のひと言です。

「花粉症だとメークできない」という発言に全体が引っ張られている時に、ひとりだけ思考をあらぬ方向に拡散させていたのです。「花粉症の女の子って色っぽくない?」という発言は、編集長がこんなことを連想していたから出てきた言葉です。

花粉症 → 涙目 → 失恋 → そういえばあいつどうしてるかなあ? → 色っぽくていい女だったよなあ → 花粉症って色っぽい?

なんて身勝手な連想でしょうか。

でも編集長の拡散思考によって、面白い企画ができたわけです。拡散思考法は初めに言ったように「話に集中しない」ということがポイントとなります。そして発想をフリーにして連想するままに話の位相をずらしていきます。このことを僕は「ディスプレイス」と言っています。

大切なポイントをまとめましょう。覚えておいてください。

企画を生み出す拡散思考法のポイントは集中しないこと。
そして自由に発想をディスプレイスすること。

僕の運営している「山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロン」では、編集者として培った人を巻き込むメソッドを、みなさんに伝えています。編集者でなくても編集力は必要な時代です。何か企画を生み出すときにも、ロジカルに突き抜けた企画を生み出すためのメソッドがあります。今回はそのごく一部をお伝えしました。

あーーー集中して原稿を書いたのでしばらく脳みそをディスプレイスします。アマゾンプライムビデオで『仁義なき戦いシリーズ』でも観ます。

編集者は2時間以上集中できない人種なんです。

山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロン
山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロン
山本由樹のインテグレーテッドエディティングサロン
あらゆる場所で情報が溢れかえっている今、これから最も重要とされるのは編集の本質を知り、適切な情報を適切に切り取り、繋ぎ合わせる「編集...