ビジネスパーシンからも注目されるリベラルアーツとは

最近、ビジネスパーソンのあいだで、教養やリベラルアーツへの関心が高まっています(定期的に訪れるものでもありますが)。リベラルアーツとは、もともと自由技芸7科に由来します。当時、哲学に加えて、文法、表現、論理学、代数学、幾何学、天文、音楽の7つの科目を習得することで、「(奴隷ではない)自由な人」になることを目指したのです。 

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授を務める社会学者・西田亮介氏が、Synapseで主宰する「新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」の募集文にはこう記されている。

このゼミナールは月に一度のリアル読書会とオンライン上でのディスカッションを軸に進行していく。リベラルアーツを学びたい学生から社会人まで、様々な人が集う私塾のような場だ。

今回は本ゼミナールのリアル読書会の様子をお届けしたい。

新書から学リベラルアーツ

読書会に臨むにあたり、西田亮介氏から課題図書が事前に指定されており、講義は参加者有志が準備したレジュメを使って進めていく、大学のゼミのようなスタイルだ。

課題図書は高原基彰著『現代日本の転機・「自由」と「安定」のジレンマ』。

今日、すべての人が被害者意識を抱え、打ちひしがれている。現代日本を覆うこの無力感・閉塞感はどこから来たのか。石油危機に端を発する「七三年の転機」を越えて「超安定社会」というイメージが完成した七〇年代から、バブル景気を謳歌した八〇年代を経て、日本型新自由主義が本格化する九〇年代、二〇〇〇年代まで。政治・経済システムの世界的変動を踏まえながら、ねじれつつ進む日本社会の自画像と理想像の転変に迫る。

現代日本の転機

まずは議論の前段として、西田氏から「社会学とはどのような学問か」「社会学者とは何をする人か」「社会学の研究方法にはどのような方法があるか」など社会学を学ぶ上では必須の基礎知識が語られた。

読書会1

そして、第1章を共に学んでいく。テーマは「『七十三年の転機』とは何か」。

1973年は第四次中東戦争をきっかけに石油危機が起こった年である。

本書の第1章にはE・ホブズホームの『二十世紀の歴史』を参照しつつ、「世界的な高度経済成長の裏付けのもとで人類の理想となりえた”黄金”の時代」から「投資的資本家と非熟練労働者の両極化に象徴される格差の拡大や貧困の再浮上の時代である”危機”の時代」へと転化していった73年の時代認識が記述されている。

レジュメの作成者が「官僚制」「二十世紀システム」という概念の説明をし、それを用いて「黄金」の時代から「危機」の時代への転化について辿っていく。そして「官僚制」後に訪れるグローバル化とそれによる先進国・発展途上国の光と影について整理した。

発表が終わると、西田氏が参加者に感想を尋ねた。

挙手制や指名制を取らなくとも、ゼミナール参加者からは次々と意見が飛び交う。

読書会2

働き始めてから社会学に興味を持った人、異なる専門を持つ現役学生、そもそも学びたいのにこれまでその機会を得られなかった人・・・バックグラウンドは様々だが、学びへの積極性は皆に共通している。

また、途中「73年がどんな年だったか」という問いに対しては、法律に詳しい参加者が73年の重要な判決を紹介したり、サブカルチャーに精通している参加者が当時の漫画の主人公のキャラクターに関する分析とそこから推察できる時代背景について語るなど、分野の垣根を超えた熱い議論が交わされた。

年代や専門分野を越境した学びが共有されていくその様子は、文化人・知識人たちの社交場である「サロン」のような自由な雰囲気が漂う。もしかしたら、これは大学よりも面白いかもしれない。

最後には、西田氏から著書・高原氏の根源的な問題意識や関心について語られ、高原的思想を読み解く上で参考になる書籍が紹介された。参加者全員が前のめりで聞き入り、ペンを走らせる姿が印象的だった。

教養を身につける

西田氏のゼミは、教養を身につける楽しさを実感することができる。読書を通じて「知識」を身につけることは出来るかもしれないが、こうしてゼミナール形式の学習を行うことで、その知識が他者の持つ知識とネットワークを形成していき、確かな「教養」となっていくのが感じられる。

読書会3

西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」は、日々の読書に物足りなさを感じている人、社会人だけども大学のような環境で学びたいという意欲のある人、真のリベラルアーツに触れたい現役学生・・・そんなすべての人に開かれたゼミだ。

ディスカッションの参加は強制ではないので、興味があるけどついていけるか不安という方も是非覗いてみていただきたい。きっとそこには学問の真の楽しさが広がっているはずだ。

西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
月1回の読書会を実施します(原則、第3土曜日13時~@都内)。新書、文庫を中心に、教養を深めます。内容の要約、議論を中心に。人の集ま...