”ヒモ”それは生活面・金銭面において多くをまたは全てを女性に頼って生きる男の総称。

一般的にはネガティブな意味合いで語られることが多いが、その理由として「男性がお金を稼ぎ、女性が家庭を守る」といったステロタイプな家族像が前提にあるのではないだろうか。

現在は多様な生き方・ライフスタイルが認められる時代。男女の雇用均等化が進められる一方で、専業主夫やイクメンといった言葉が定着するなど、社会や家庭における男女間の差異もなくなってきている。

そうであるならば通常寄生者として語られる「ヒモ」という存在も、見方を変えれば一つの男女関係のあり方として認めることができるのではないだろうか。

・・・そこで。

「ヒモを養う・養われる関係に果たして幸せはあるのか!」という疑問に答えるため、篠原かをりさん、北条かやさん、セブ山さんという、ヒモに一家言持つお三方をお招きし、三者三様の立場から語って頂くことにした。

篠原

ヒモを”飼育”する女:篠原かをり

ヒモの飼育と昆虫をこよなく愛する現役女子大生。高校生時代に取り組んだカイコの研究がきっかけで慶應義塾大学にAO入学。第10回「出版甲子園」グランプリ受賞をきっかけに『恋する昆虫図鑑―ムシとヒトの恋愛戦略』を出版する。過去3年にわたり、大学中退無職のヒモを溺愛。書籍の印税、テレビの出演料などをヒモの養育につぎ込むことが働くモチベーションになっているという。

北条

ヒモに癒されたい女:北条かや

「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿するライター。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2月25日に星海社新書より『キャバ嬢の社会学』を発売。戸籍に縛られず、純粋に愛してくれる存在としてのヒモに可能性を感じている。最近では元歌舞伎町No.1ホストのヒモ男性を溺愛している。

セブ山

ヒモ道を極めんとする男:セブ山

オモコロ、トゥギャッチなどで連載を持つ人気ライター。無職時代に培ったヒモの経験を生かし、ヒモ男専用LINEスタンプ「ヒモックマ」をリリース。下北沢B&Bで「ヒモ塾」を開催。2016年10月に「ヒモックマ まるごとブック」を出版。所持金ゼロをアピールするコインケース、ヒモのための確認事項入りの婚姻届など、ヒモ専用グッズの企画、販売も手がける。

会場を提供してくださったのは渋谷・円山町に今夏新しくオープンしたばかりのトークライブハウス「LOFT9」。円山町と言えば、ライブハウスやクラブ(おまけにラブホテル)が密集する渋谷カルチャーのメッカ。そこに新しい風を吹き込むべく進出してきたトークライブハウスである。

入り口

気軽に利用できるカフェが併設されており、出演者に関わるものやカルチャー関連の本やグッズなどを販売するコーナーも充実している。料理やドリンクのメニューも豊富で、ついついお酒が進んでしまうこと請け合いだ。また、LOFT9では登壇者もお酒を注文することができる。トークを聞きながら登壇者の方と一緒にお酒を飲む。その体験は何事にも変えがたいものだ。

乾杯

与えられるものと与えるものは等価交換

「ビジネスとしてのヒモ」を標榜し、プロ意識を持って取り組むセブ山さんによれば、一方的に与えられる側に思えるヒモにもそれなりの矜持があるという。

ヒモは、養う側である主人(※一般的な用法ではないが、ここでは養う側を主人とする)に対して、「若さ」であったり、こまめに感謝を伝える、帰りに駅まで迎えに行くなど、「かたちには残らないプレゼント」を提供することで、釣り合いの取れた関係を作るべきなのだと説く。

他にも「家事をやってはいけない」「複数と関係を持ちたい場合は最初に明言をしておく」といった具体的なノウハウから、途中には「ヒモの天敵は主人の女友達。女友達はすぐに『そんな奴とは離れなよ!』などとわけのわからないことを言ってくる!」というありがたい格言が登場した。

その対策として、「ヒモは主人と女友達との付き合いを徐々に減らしていく方向に誘導し、付き合いの悪い人間だと思われるように仕立て上げてゆくべき」といった、かなりえげつないメソッドが明かされた。

 セブ山

ヒモは癒し?恋愛対象?それぞれのヒモ観

篠原かをりさんはヒモを”飼育”して3年が経つ。その間に書籍の印税やクイズ番組の出演料などをヒモにつぎ込むことが仕事のモチベーションになっているという。

実家が貿易会社や農場を経営しており、自ら「将来もお金の心配はいらない」と言う篠原さんの話は全てが豪快だ。

「(ヒモは)基本的に外に出ないので色白で手触りがいい」「今飼育しているヒモは何もできない人。生命力がまるで無いのがいい」「ヒモの数はいるほどいい。ヒモの牧場を経営したい。」しまいには「電話番号より先に口座番号を教えて欲しい」という名言も飛び出した。

一方北条かやさんは、ヒモに対して「とにかく癒されたい」「お金の心配はしなくて良いから、その替わりに家事とかをして待っていてくれたら嬉しい」「婚姻関係に縛られずに純粋に愛でていたい」という主張。いずれも何かを与えることで、必要とされているという実感を得るという点においては共通しているものの、ヒモを飼育・研究の対象としてみている節のある篠原さんと、ヒモに対して愛情と癒しを求める北条さんとの対照が興味深い。

笑い

二人

sebuya

贈与の意味、ヒモと主人の幸福な関係とは

イベントが後半にさしかかるにつれ、来場者の質疑応答も絡めて、ヒモと幸せに生きるためにはどうすれば良いか、ヒモが認められる社会になるにはどうすれば良いか、といった真面目な内容についても語られた。

イベント後に北条さんはブログでこう述べている。

 ヒモは他者から金銭なり物資なりを得るかわりに、相手に対し、大きな承認を与えている。突き詰めれば、与えるもの、たとえばなんらかのコミュニケーション資源がない者は、ヒモにはなれないのかもしれない。けど、与えるものがない人間なんてこの世にいないのだ (→なぜなら、人として存在するということは、与え与えられる関係にある、ということだから)

 結局ヒモなる存在は、われわれが他者と存在しうる可能性、幸福な関係のあり方のひとつなのではないか。ヒモは、その存在自体が「与えること」=「贈与」なのだから。

ヒモを養う、養われるといった主従関係ではなく、シンプルに二者間における贈与に着目すれば、日常的に誰もが行なっている人間関係と同じように捉えることができる。一般的には受け容れ難いかもしれないが、将来こうした考え方が広く受容される日がやってくるのかもしれない。

自分のパートナーに限らず身の回りのあらゆる関係において、与え・与えられる行為を改めて捉え直してみたい。

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