9/9(金)台風一過の炎天下の中、「黒田涼の江戸・東京を歩いて読み解くサロン」オーナーで、作家の黒田涼氏を案内人にお迎えし「築地ー豊洲散歩会」を行った。

築地市場移転問題によって最近では全国区で取り沙汰されるようになった築地と豊洲。渦中の場所は一体どのような場所なのだろうか。作家・黒田涼氏の目線から見たそれぞれの土地とは。
前編「作家・黒田涼と語り歩く江戸東京 築地ー豊洲コース 築地編」番外編「作家・黒田涼と語り歩く江戸東京 築地に由緒のある学校特集」に続く今回は「後編 豊洲編」をお送りする。築地から豊洲まで歩く中で知った二つの街の違いや、新豊洲市場の印象をお伝えしたい。

佃大橋

築地エリアから豊洲方面に向かうため、佃大橋のたもとまで歩いてきた。今いるのは地図でいうと①の場所だ。

エリアマップ1から南側を見ると。

町並み2黒田涼氏「道や区画が広くて、並木なんかもモダンだね。これは、外国人居住区の名残です。一方で、こちら側(北側)を見ると・・・」

編集部北澤「ほんとですね、全く世界が違います。”江戸”感がめっちゃありますね!」

北側は、細かく町が区切られ入り組んでいて、なんとなく江戸っぽさが感じられる。地図で見ても写真で見ても一目瞭然だ。ちなみにこのあたりのエリアは、入船町、湊町という地名からも分かる通り、江戸湊(えどみなと)といって、江戸時代の海運交通の要衝だった。
町並み2

の地点で「佃島渡船」の石碑を紹介いただき、佃大橋を渡る。
佃島渡船

 

佃島歩く

地図ののあたりで、
黒田涼氏「あちらを見て下さい。石川島と佃島が綺麗に分かれているのがわかりますか?」
編集部北澤「あー、ほんとだ、わかります!奥のマンションが乱立している所が石川島で、手前の背の低い古い建物が並んでいる所が佃島ですね。」
黒田涼氏「石川島は、昔IHI、石川島播磨重工業があったところですね。日本初の民間造船業者です。」
編集部北澤「ここまで明確に別れるのはオモシロい!」

石川島と佃島

 

隅田川河口近く あさしおおおはし朝潮大橋を渡り晴海エリアに入る。高層マンションとショッピングモール、工場と、大きな建物が立ち並んでいてあまり風情はない。ザ・埋め立て地という雰囲気を感じながら歩く。晴海通りに突き当たり左折。晴海橋を渡れば向こうはもう豊洲エリアだ。

廃線黒田涼氏「この廃線は、東京都港湾局専用線跡で、昔は豊洲の石炭埠頭から越中島までを結んでいたみたいですね。一部の鉄っちゃん(鉄道オタク)からは人気のSPOTみたいですよ。」

東京湾は、かつて石炭(当時はガスの原料でもあった)やセメント、鉄鋼等を扱うエリアだった。戦後復興期の日本の重工業や軽工業を支えた場所なのである。今や世界最大規模の都市ガス会社である東京ガス工場跡地に建設されているという、豊洲新市場までもうすぐだ。

建設中のマンション

編集部北澤「それにしても本当にマンション多いですね。」

黒田涼氏「つい10年前くらいまでは視線をあげると空が広がっていました。本当に何にもなくて。それが今ではマンションだらけですね。」

編集部北澤「やっぱこれだけマンションが建つと上空の空気なんかも変わるんでしょうね。だけど川があるところでは良い風が入ります。あー涼しい。」

豊洲を歩く二人黒田涼氏「石川島播磨の造船所があった頃のドックを残し中心にくるように商業施設を作ってるようですね。こういう景観や歴史を大事にしたまちづくりはいいですよね。ここは、ららぽーとなんで三井さんかな。」

編集部北澤「大手デベロッパーによる再開発はどんどん進んでいるんですね。」

黒田涼氏「そうですね。各社でまちづくりへの姿勢がだいぶ違いますよね。例えば日本橋エリアのように日本の歴史を大事にした開発をする三井、丸の内に代表される西洋風のモダンなまちづくりが得意な三菱さん。といった感じで。」

石川島播磨のドック

まちづくりのグランドデザインの雑談を交えながら、地図にはない細道を選んで一直線に豊洲新市場に歩を進める。黒田涼氏は、きっとこういう狭い道や道なき道を探り探り進んでいく散歩、もとい探検がとても好きなんだろうなと感じる。好奇心のまま好きなことを仕事にしている黒田涼氏。僕もこういう生き方をしてみたいと思った。 危ない鋼鉄の下向こうに見えるのは、建設中の首都高晴海線だ。再開発著しい豊洲を中心とした臨海エリアと都心をそれぞれ結ぶ首都高だ。それにしても鋼鉄の塊が落ちてしまいそうで怖い。

豊洲市場目前

黒田涼氏「豊洲エリアに入ってからも市場まで結構歩くんですよね。」

編集部北澤「東京メトロ豊洲駅からも結構歩く感じですね。やっぱり市場に行くのに使うのはゆりかもめの市場前駅になるんでしょうか。」

黒田涼氏「観光客なんかはそうなるでしょうね。銀座や新橋あたりのお寿司屋さん、料理屋さんなど本当に市場として利用している人たち、朝買い付けに行く人たちの利便性がどうなるかっていうのはあるね。」

地図で見てみると分かりやすい。

エリアマップ2

黄色が高級料亭などの多い都心部青が築地市場赤が豊洲市場だ。こう見てみると、築地市場が意外と結構都心に近いことが分かる。豊洲市場に移転したら、今まで築地市場を定期的に、それこそ毎日のように利用していた人たちの生活が変わることは間違いないだろう。
手前に見えるのが、ゆりかもめの線路で、向こうに見えるのが建設中の首都高晴海線のゲタだ。ゆりかもめの上を通さなければならないから、かなり高い位置に建造している。この晴海大橋南詰の信号を右折すると、いよいよ本格的に豊洲の埠頭エリア、新市場建設地に入っていく。

 

開場予告看板ついに見えてきた新市場。撮影した9/9現在、既に開場延期が決まっていたが、それでも「11月7日 豊洲新市場開場!」の看板は取り下げられていなかった。

豊洲新市場

それにしても、とても綺麗で無機質な建物だ。市場というより、何かの化学工場だと言われた方がしっくりくる感じがする。

豊洲新市場3

橋建設

新市場建設のためだろうか、豊洲埠頭と晴海埠頭を結ぶ新しい橋も竣工間近だ。橋の位置は以下の地図青部。
エリアマップ3

黒田涼氏「…もう少し色気出してもいいような気がするけどねえ。」

編集部北澤「ほんとですね。」

黒田涼氏「築地のようなthe”アジアの市場”っていう雰囲気はなくても、例えば道路や歩道からも見える位置に最新の巨大透明イケスがあって、それを眺められるとか(笑)」

編集部北澤「あ、それ面白い!水族館みたいだけど(笑)」

営業が始まれば、この風景の中に魚の臭いがしてくるんだろうか。最新鋭の空調換気システムかなにかで、外に一歩出たら魚のさの字も感じられないような空気になるんだろうか。そうしたらまた感じ方が変わるかもしれない。もしかしたら、築地とは違った「玄人感」を感じられる施設になるかもしれない。なにはともあれ、営業開始が楽しみである。

 

ちょっとさみしいな、と思ったのは、以下の写真だ。関連飲食店街

これは、今の築地市場で言うところの、場内の魚河岸横丁の飲食店街で営業しているお店が入る「関連飲食店舗」が集まる建物の入り口だろう。
築地でいうところの、以下の写真、この場所だ。

築地の飲食店街例えば魚の競りや加工、短期的な保存管理などの市場の業務は、新しくて綺麗な新市場で清潔に効率よくやって欲しいと思う。一方で、業者だけでなく一般の人々も行き交ってきた賑やかで雑多な飲食店街の怪しい雰囲気までもが、この新しい新市場の無機質な雰囲気に飲み込まれリセットされてしまうのはいささか寂しいと思うのは、要らぬ懐古主義だろうか。

一方で、美味しいお魚料理をいただける街が増えるのは私にとって嬉しいことだ。築地場内市場にある飲食店は豊洲新市場に移転するのだが、場外にある飲食店はこれまで通りそのまま築地で営業を行う。築地場内市場と築地場外市場は、ただある場所が塀の内と外なだけでなく、そのスタンスも明確に分かれる。「場内」は、東京都公設の卸売市場としての築地市場の中という意味で、「場外」はそれ以外、つまり東京都とはなんの関係もない。場外で営業する500超の飲食店含む商店の多くはこれまで通り築地で営業を行う。

つまり、
友人「美味しいお魚を食べに行こう」
北澤「いいね!じゃあ朝築地に行こうか」

という会話が、

友人「美味しいお魚を食べに行こう」
北澤「いいね!築地にしようか。豊洲にしようか。迷っちゃうナァ!」

となるわけだ。美味しいごはんを友人と食べるのが好きな私はとても嬉しい。

改札

築地特有の”市場感”はなくなっても、そこで働く人、それぞれの人となり、心意気はきっと変わらない。相変わらず活気ある市場で、東京を始めとする日本の食卓を元気にしてほしい。豊洲で無事営業を開始したら、是非遊びに行きたい。

一方で、昔も今も重要な施設がありそれを中心に活況を呈してきた築地という町には、今後カジノができるだとかスタジアムができるだとか、様々な憶測と情報が飛び交っている。築地の今後からも目が離せない。

 


前編「前編「作家・黒田涼と語り歩く江戸東京 築地ー豊洲コース築地編」番外編「作家・黒田涼と語り歩く江戸東京 築地に由緒のある学校特集」そして、本編「作家・黒田涼と語り歩く江戸東京 築地ー豊洲コース豊洲編」でお送りしてきた「作家・黒田涼と語り歩く」シリーズ。いかがだっただろうか。

黒田涼氏のオンラインサロンでは、これらの記事でお送りしてきたようなニッチでディープな東京街歩き情報が満載だ。実際に町を歩きたい方、一緒に街歩きをする仲間を見つけたい方、ディープSPOT情報には目がないという方などには、物腰柔らかくたまにユーモアも交えながら、これでもかという膨大な情報をもって東京を案内してくれる黒田涼氏の「江戸・東京を歩いて読み解くサロン」、大変オススメなサロンである。

 

黒田涼の江戸・東京の歴史を歩いて読み解くサロン
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「黒田涼の江戸・東京の歴史を歩いて読み解くサロン」は、作家・江戸歩き案内人の黒田涼が主宰する会員制コミュニケーションサロン。 江戸...