大菅小百合さんは、スピードスケート女子500mの前日本記録保持者で、冬季五輪に二度日本代表選手として出場した名選手ですが、実は自転車競技選手としてもアテネオリンピックに出場するなど、日本では数少ない冬季・夏季両大会出場経験者です。

2011年に現役を退かれて以来、後進選手の育成に取り組むかたわら、最近ではパラリンピックの特集番組で選手の取材をしたり、競技の解説をするなど、各方面でご活躍されています。

そんな大菅さんに9月7日に開会したリオデジャネイロ・パラリンピックの見どころについてお話を伺ってきました。

パラリンピック観戦のポイントとは

――早速ですが、今回のパラリンピックで注目している選手はずばり誰ですか?

大菅小百合さん(以下:大菅)「そうですね、義足での陸上競技の先駆者である幅跳びの山本篤選手、今回68歳で日本選手団の最年長出場となった車いす卓球・別所キミヱ選手、車いすテニスのレジェンド・国枝慎吾選手、健常者を含めた大会での実績もあるパワーリフティング・大堂秀樹選手などです。もちろん、自転車競技の選手は全員注目しています!」

――パラリンピックに競技に興味を持たれたきっかけはあったのでしょうか。

大菅「はじめはニュースでメダルなどの速報を見て名前を認識する程度でしたが、取材やインタビューをさせていただく中で直接パラリンピアンに触れ、彼ら・彼女らの競技選手としての背景、アスリートとしての姿勢や困難をものともしないマインドなどに感銘を受け、競技にも興味が湧いてきました。」

――これまでの取材の中で特に印象に残ったエピソード、驚いたことはなんですか?

大菅「例えば自転車競技のタイムトライアル、ロードレースなどに出場する川本翔大選手。今回が初出場、19歳と言う年齢もさることながら自転車競技歴おおよそ7ヶ月で代表入りを果した注目の選手です。驚くべきはその競技スタイルです。多くの競技選手が義足を使う中、彼はなんと右足一本で他の選手と同等に渡り合います。」

――すごいですね。

大菅「取材の後に番組の企画で彼とガチンコでレースをすることになったのですが、負かされまして。」

――え、大菅さんがですか!?ガチンコで?

大菅「ええ。正直勝てると思って臨んだのですが…スタート直後は両足で漕ぐ分リードできるのですが、スピードに乗ってからは次第に差を詰められて…」

――驚愕ですね。義足を使わないのはどうしてなのでしょうか。

大菅「生まれて間もないころ疾患により左足を切断したのですが、義足が合わず物心ついた時より松葉杖で生活してきたのだそうです。それが彼にとって自然なことで不便に感じたことはこれまで一度もないそうです。むしろ、周りの人の足が二本もあることが不思議だったと。」

――すごいエピソードですね。

大菅「そんな話を一点の曇りもない笑顔で楽しそうに話すんですよ。心の底からハンディキャップを感じていないのだなあと思って、その時はぐっとくるものがありました。」

――他に注目している選手はいますか?

大菅「私と同世代の選手なのですが、女子タンデム(二人乗り用自転車競技)の鹿沼由理恵選手です。彼女は弱視で目がほとんど見えません。そのためガイド役の健常者とペアを組み、二人乗りの自転車を漕ぎます。相方の田中まい選手は現役の競輪選手で普段はガールズケイリンで活躍されています。」

――トラックでペア競技というのは珍しいですね。個人競技とどのような違いがあるのでしょうか。

大菅「タンデムは非常に高度なチームワークの求められる競技です。息のあったペダルワーク、舵取り、精度の高い意志の疎通が求められるパラリンピックならではの競技と言えます。鹿沼選手はもともとクロスカントリーでパラリンピックにも出場経験があります。ところが競技中に肩を故障して競技を諦めかけていたところ、同じ競技をしていたカナダの選手に勧められ、自転車を始めたのだそうです。川本選手同様今回は初出場になります。」

――冬季・夏季に出場されているという点も大菅さんと同じですね。

大菅「二人とも柔和で物腰が柔らかいのに、一本芯の通った人といいますか、非常にストイックな方です。また、印象的だったのはペアの体調や心理状態が競技中に分かるというものです。」

――すごい。コンビネーションを極限まで高める競技ならではのお話ですね。

大菅「はい。私もその話を聞いた時には驚きました。どれだけ高度なやり取りをしているのだろうと。鹿沼選手は『自分は目が見えないだけで他は健常者と同じだから、健常者同士のペアにも負けない』と言います。」

――川本選手もそうですが、競技者としての高いプライドを感じます。

障がい者はハンディキャップを負っている?

大菅「彼らを見ていると、障がい者は健常者に劣るというのは思い過ごしなのだということがわかります。また、タンデムのような通常の競技では見られないチームワークや駆け引きやなどもパラリンピック観戦の醍醐味です。例えば視覚障害者の柔道は互いに組み合った状態から始めるので、必然的にノーガードの投げ合いになります。健常者同士の柔道よりもスリリングで面白いですよ。」

――パラリンピック競技特有の面白さがありますね。そういうことをもっと世の中に伝えていけたら良いですね!

大菅「そうなんです。競技の魅力はもちろんのこと、川本選手にしても、鹿沼選手にしても、それぞれに歴史・背景があります。先天的障害、挫折からの復帰、故障による路線変更など、ひとりひとりにドラマがあるのです。そのことをもっといろんな人に知って欲しいし、報道して欲しいですね。選手の背景がわかると応援したくなりますし、実はものすごく大変で高度なことをしているんだということがわかると思うので。」

大菅「ここで紹介した方の他にも藤田征樹選手、石井雅史選手など北京大会のメダリストが揃っています。自転車競技はどこからでもメダルが期待できると思います。みなさんもぜひ応援してくださいね!」

――ありがとうございました!

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元オリンピック選手大菅小百合の自転車の“家庭教師”
元オリンピック選手大菅小百合の自転車の“家庭教師”
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元スピードスケート女子500m日本記録保持者として2度の冬季オリンピックに出場する傍ら、自転車競技選手としても夏季オリンピックへ出場...