街中の桜が満開となり、新学期の始まる4月。

「もう一度文芸部をやりたい」

桜吹雪を浴びながら、牧村朝子氏は「まきむぅの手乗り文芸部」を立ち上げた。

プロフィール|牧村朝子
タレント、文筆家。2010年、ミス日本ファイナリストを機に芸能界デビュー。2012年渡仏、フランスやアメリカでの取材を重ねる。2017年独立、現在は日本を拠点とし、執筆・メディア出演・講演を続けている。夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。出演『ハートネットTV』(NHK総合)ほか、著書『百合のリアル』(星海社新書/2017年、小学館より増補版刊行)『ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?』(イースト・プレス)ほか。

まきむぅの手乗り文芸部は、「スマホひとつで、おふとんからでも、読める、書ける、つながれる。」をコンセプトに、文芸に熱狂するメンバーが集うオンラインサロンだ。

サロンでは日々、部長・牧村朝子を筆頭に、文芸部ならではの活動が繰り広げられている。

今回はその数ある活動の中から「800字小説」と「文学ゲーム/小説リフォーム」を紹介したいと思う。

「800字小説」は牧村氏が母校で所属していた文芸部で伝統的に行われてきた活動であり、各自がテーマに沿って5ツイートほどの小説を投稿するというコンテンツ。「文学ゲーム/小説リフォーム」はある人が書いた文章を、まるで別の人が書いたかのようにリフォームするというコンテンツだ。

どちらも自身で作品を投稿するだけでなく、他のメンバーや牧村氏の投稿や感想を読むなどの形で楽しむこともできるコンテンツとなっている。

もちろん、部長である牧村氏も自身で小説を投稿したり、積極的に参加者の投稿にコメントしたりと、すべての活動に参加している。今回はそんな牧村氏の投稿とともに「まきむぅの手乗り文芸部」のリアルを紹介していきたいと思う。

部活動紹介「800字小説」

今回紹介する800字小説のテーマは「はなひらく」。

はな、って、なにかしらね?「花」とは限らないわね?
文字通りの意味なのか、それとも、なにかのたとえなのか。

このような牧村氏の言葉を皮切りに、サロンメンバーは思い思いの作品を投稿していく。
その中で、部長・牧村氏は次のような小説を紡いだ。

『いちごがひとつぶできるまで』

 四月のみどりの草原に、いちごの花が咲いています。
 まっしろけっけの雪がとけ、色とりどりの春もよう。さくらのピンク、かたばみの黄色。クレヨンの箱をあけたみたい。
 けれどいちごの花たちは、まだ冬みたいに白いのです。だからいちごの花たちは、赤いいちごになりたいのです。
 たったひとつのつぼみを除いては。

「ぶんぶん、ぶんぶん、こんにちは。あなたが咲くのは、まだですか」
 咲かないつぼみに、みつばちが言います。
「いやよ、いやだわ。あなたが来たら、わたし、真っ赤に太っちゃう」
 みつばちがしょんぼり帰ると、かわりに、メジロがやってきました。

「ちゅんちゅん、ちゅんちゅん、こんにちは。あなたが咲くのは、まだですか」
「いやよ、いやだわ。あなたはどうせ、わたしの蜜がほしいだけ」
 メジロは、ちゅんちゅんぷんぷんして、ぷくっとまんまるにふくれあがりました。

 虫や、小鳥や、動物と、他のお花は遊んでいます。花びらを散らし、ピンクになって、みんな、すっかり春の色。けれども咲かないつぼみだけは、ひとり、白い花びらに閉じこもったままです。

 春の嵐がきました。
 みつばちも、メジロも、隠れています。だけれどいちごたちには、逃げる巣も、翼もないのです。ふくらみかけのいちごたちは、嵐に飲まれ、飛ばされて、地面でぺしゃっとつぶれました。
「さよなら。私、うさぎさんのお腹で跳ねまわりたかったわ」
「さよなら。私、かたつむりさんのお腹でお昼寝したかったわ」
 つぶれた仲間の最後の声を、咲かないつぼみは、ひとり、白い花びらの中で聴いていました。

 嵐が過ぎ、つぼみは根から、ぐんぐん栄養を吸いました。跳びたかったいちごも、お昼寝したかったいちごも、みんな土にかえったようでした。

 やがて、つぼみは知りました。外の世界には、白のほかにも色があることを。

 あまく、真っ赤に太った体を、つぼみはもう、はずかしいとは思いません。
「いいにおい」
「おいしいね」
 うさぎや、かたつむりたちが、つぼみだったひとつぶのいちごを、みんなで分け合って食べました。

 四月のみどりの草原の、花咲くころのおはなしです。

ここでは同じテーマでも、参加している部員からそれぞれ全く世界観の異なる作品が披露されており、その全ての作品に牧村氏から感想が投稿される。ただ書いて楽しむだけでなく、向上心も掻き立てられるコンテンツだ。

部活動紹介「文学ゲーム/小説リフォーム」

次に紹介する文学ゲーム/小説リフォームの題材は太宰治の「走れメロス」。

サロンメンバーはこのあまりにも有名な作品を自由にリフォームしていく。文体の元ネタを書くも良し、書かないでクイズ形式にするも良し。

期日までに1番多くの「いいね」を獲得したものが「小説リフォームの匠」として表彰される仕組みとなっている。

さっそく、私からいってみよっと。私の好きな作家さんのモノマネをします!よかったら誰だか当ててみてね♡
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やれん。実になんというか、やれんよ、ホントに。先刻から酒を飲み、笛を吹き、羊と遊んでいるこの体たらくを、村のオバハンなどは冷ややかに一瞥してのち何事もなかったかのように通り過ぎていくのだが、かかる態度がこの市をやけに寂しいものにしておるのだ。呆れたオバハン。生かしておけぬ。
そこで、うどんである。率直に言ってうどんは、ハハッ、うどんは、世界を救うのですよ。信じたい、うどんを。僕は。私は。ドゥーユーアンダスタン? 政治のことは知らんが、しかし、うどんなのだよ、諸君! 一席ぶってはみたものの、眼前には羊しかおらず、家畜どもはげちゃげちゃに垂涎、のち、脱糞している。虚脱している。
あんけらそ。
俺は決意した。殺す。王を。殺してこます。
かかる決意のもと、俺は走り出したのである。リリカルに。リズミカルに。
セリヌンティウス?
知らんがな。

どの作家の文体かお分かりだろうか。

これが分かったマニアな方には、是非「まきむぅの手乗り文芸部」へ入会していただきたい。

他にもサロン内には「日本昔話風 走れメロス」や「ドラクエ風 走れメロス」など個性光る作品が投稿されており、「まきむぅの手乗り文芸部」書いても読んでも楽しい文学ゲーム空間になっている。

その他部活動紹介

まきむぅの手乗り文芸部」では、他にもテーマに沿っておすすめの本を紹介し合う「文芸部員のブックレビュー」などの活動が行われている。

どの投稿にもサロンメンバーの愛が溢れており、思わずその本を手に取って読みたくなるブックレビューばかりだ。

もちろん、オンライン上の活動だけでなく、オフラインでのリアルな部活動も活発に行っていくつもりだ。具体的には、月に1回程度の読書会や美術館巡りなどを開催していく予定である。

「一緒に読書や文芸を楽しむ仲間がいたら・・」という方は、ぜひ「まきむぅの手乗り文芸部」を覗いてみて欲しい。

まきむぅの 手乗り文芸部
まきむぅの 手乗り文芸部
まきむぅの 手乗り文芸部
コンパクトで置き場所に困らない、手のひらサイズの文芸部です。スマホひとつで、おふとんからでも、読める、書ける、つながれる。 ●...